
最近、広告の力や役割について考えることがあります。
とある有名なクリエーターが
「最近、広告の力が落ちている。なぜなら、広告が面白くなくなってきているからだ」
とつい先日語っていたそうですが、はたして本当にそうだろうか?と思うのです。
広告は面白くなければならないのか、と。
一応コピーライターやってる僕ですが、
実は自分自身が広告によって商品への興味や購買行動を喚起されたことは
ほとんどゼロに等しいんです(少なくとも記憶にない)。
1)新商品の情報は口コミや日経、情報誌を読んで開発段階から目をつけてる。
その時点で興味があるものとないものを選別している。
2)興味があるものは発売前から情報を収集する。
公表される頃には商品理解はほぼ十分。自分の生活に生きるかどうか吟味してる。
3)欲しいと思う商品については、詳細情報を収集する。
参考にするのは専門誌の記事やカタログ。つまりファクトを緻密に記したもの。
1)の段階で僕が認知しなかったものや興味をもたなかったものや
2)の段階で吟味の結果自分には不必要と判断したものについては、
その後ほぼ完全に意識から切り離してしまうのです。
広告が流れていたらもちろん認知はします(人よりもよく覚えている)が、
どれだけ表現が面白くても巧みでも、その商品に興味を持つことはほぼありません。
つまり、商品認知や興味喚起をまったく広告に頼っていないんです。
信じているのは100%自分のアンテナだけ。
3)の段階に来ると、興味喚起を主に目的としたマス広告はもう不必要、
というより役に立たない。表現せんでいいから、とにかく細かいファクトをくれ、と。
こういう人、僕だけじゃなくて結構いると思うんですよ。特に最近。
企業発の(多分に押しつけ的な)商品紹介&ライフスタイル提案に懐疑的。
自分が興味を持つモノに対しては極めて情報感度が高く、自分で判断する消費者。
彼らは互いのことは信用していて、もともと興味がなかった分野のことでも、
(どれだけ面白い広告宣伝でも一切耳を貸さないのに)
信頼する仲間が興味を持っていて、彼の話を聞くと急激に意識し始める。
そして持ち前の情報収集力で自分のモノにしてしまう。
この人たちって、どうも「オタク」とかぶっている気がしませんか。
「オタク」はお金を出すと決めたものに対してはドン!と出します。
その代わり、興味がないものには財布のヒモを固く締めてしまってる。
要するに消費行動がとても偏向的なんですが、
選ばれた企業や商品にとって彼らはとんでもない購買力を持つ上得意です。
今後テレビの多チャンネル化(衛星&地上波デジタル放送)が進んだり、
インターネットによって距離を超えた人とのつながりが作りやすくなれば、
人々の持つ興味や趣味はどうなっていくでしょうかねぇ。
選択の多様化、無制限化は逆に一人ひとりの人間を偏向的にしていく気がします。
だって、あれだけ様々なジャンルの掲示板が並ぶ「2ちゃんねる」だって、
いつも覗く掲示板は限られてて、それ以外は一度も見たことがない人が多い。
これは多分、みんなが程度の違いはあれ「オタク」化していく可能性があるということです。
彼らの購買行動を支える広告を、そろそろ真剣に考えるべきだと思います。
マス広告なら、企業(ブランド)広告。
これは、いつも目をつけている一群(ウォッチリスト)に入るため。
商品広告をする場合は「その会社らしい」独自のトーンが一貫されているべき。
つまり商品広告は、具体的な商品を題材にした企業広告と言えます。
アップルコンピューターや最近の日産自動車はその好例です。
もうひとつ力を入れるべきなのは、「ビロウ・ザ・ライン」。カタログその他です。
興味がある人を対象とし、購買に踏み切らせるための吟味材料となるものです。
専門書もビックリ、ぐらいの突っ込んだ内容でもいいぐらいです。
単に興味喚起という次元を越えて「オタクをうならせる」、
それぐらいの広告がこれからもっと出てきていいはずです。
今まで「広告では動かない集団」とマーケッターが分類していた人たち。
正直に言えば「広告があきらめて狙うのを放棄していた」人たち。
彼らを動かすというのは新しい広告のチャレンジだし、
それに成功すれば広告の存在意義はもっと広がると思います。
そういう広告がなくて自分自身が不満だったから広告の作り手になった、
そんな僕自身にミッションとして課していきたいと思います。
とは言え、
「広告は見たくないもの、という前提で作らなければ絶対にイイ広告はできない」
という先人の主張もなるほどと思うことはあります。
特に日用品や消費財などは商品自体の均質化が進んでいて思い入れが薄い分、
語りを深くきいてみたいと思う人はあまりいないだろうし。
「セロテープオタク」とか想像できないもん。
でも、鉛筆や消しゴムは上記のようなアプローチがあり得る気がするな。
「ステッドラー(ドイツの文具品メーカー)しか買いません」
という人も相当いそう。セロテープと何が違うんだろう?
「よそとは質が違うものを作っている」ことへの信頼かな。
ありゃ、それこそ「ブランド」だな。
うーん、酔っぱらい議論みたいになってきたから、この話はこれまで。